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街並み Vol.29  
住まい・まちづくり諸制度研究 目次

不動産鑑定評価とまちづくり
吉村 真行
■プロフィール
現在、(株) 吉村総合計画鑑定代表取締役、不動産鑑定士・一級建築士・再開発プランナー
1964年静岡県生まれ、1988年東京大学工学部建築学科卒業、1990年同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了、安田信託銀行(株)(現、みずほアセット信託銀行(株) )を経て1999年(株) 吉村総合計画鑑定を創業
(社)東京都不動産鑑定士協会業務推進委員会小委員長・研修委員会委員、国土交通省地価公示鑑定評価員、有楽町駅前第1地区市街地再開発事業審査委員
再開発事業等の主なコンサルティング実績:成増駅北口第2地区第1種市街地再開発事業、パシフィックセンチュリープレイス丸の内、梅田阪急ビル 等
I はじめに

 「不動産鑑定士」、「不動産鑑定評価」と聞いてもあまりなじみがない方も多いかも知れません。
 不動産を鑑定評価すると言っても、その対象は、土地、建物や借地権、底地、借家権、空中権等からゴルフ場、工場財団、観光施設財団、鉄道財団等まで幅広く、不動産の価格の他、新規・継続の地代、賃料等を判定して評価額を求めることが鑑定評価であるとまずはお考えください。
 鑑定評価の目的も、売買、担保、資産評価、現物出資、税務申告、裁判等の他、最近では企業会計における時価会計導入の流れの中で、時価評価を行ったり、不動産の証券化等の不動産の流動化に際して評価を行ったりと様々であり、幅広く活用されています。
 また、共同ビルや再開発事業等において、複数の権利者の権利変換等のための従前・従後の資産評価を行う評価コンサルティングの他に、鑑定評価に限らず、これらの事業の計画段階から事業化の段階及び管理運営段階まで、まちづくり全般について事業コンサルティングを行うコーディネーターとして活動させて頂いております。
 昨年度は、「住宅まちづくり専門家養成講座」にて「不動産鑑定評価とまちづくり」と題しまして、不動産鑑定評価の基礎知識から市街地再開発事業における評価、再開発事業・共同建替事業等の最近の取り組みなどについて紹介させて頂きました。
 この度は「不動産鑑定評価とまちづくり」をテーマとして、その中からいくつかをフォーカスして今回から数回に分けてご紹介したいと思います。


II 再開発事業等の従前資産評価

1 一体化・共同化のメリット
 等価交換事業等による共同ビル事業や市街地再開発事業等では、従前はそれぞれの権利者が不動産を単独利用していたところを、建物老朽化等による建替えに際して画地を一体利用することにより、以下のような一体化・共同化のメリットが生じます。
容積率の上昇〜画地全体が幅員の広い表通りの道路に接面し、基準容積率が上昇する。また、画地がまとまった規模になると、総合設計制度や特定街区等を利用して容積率の割増が可能となる。
効率の良い建物が建つ〜まとまったフロアがとれる建物の建築が可能となり、不動産の利用価値が高まることにより収益性、利便性、快適性等が増す。
宅地・街路整備〜建物整備とともに、周辺街路等の整備が行われ、また公開空地等の空間が創出されることにより、防災、街並み等も考慮した都市計画ができる。
建物建設資金の負担がなくなる〜容積率の上昇・割増により生まれた余剰容積率分またはこれまでの容積率未使用分を等価交換・保留床処分することにより、新たな資金負担をせずに従後資産が取得できる。

2 従前資産評価
 このような一体化・共同化のメリットとしての開発利益を権利者間で公平に分配するには、まずそれぞれの権利者の従前の資産額を評価する必要があります。従前資産としては、土地、建物の他、借地権、底地、借家権などがあります。
(1)従前土地の評価
 複数の権利者の従前土地を公平かつ合理的に評価するには、以下のように、いくつかの手法が考えられます。
 また、これらの手法の中から、一般的に多く用いられる標準価格比較法と路線価式評価法の折衷法の手順につき、合わせてご紹介致します。
評価手法 算定方法 特徴
路線価式
評価法
(価格表示)
区域内の各画地を、それぞれが面している道路を中心に等地価帯に区分して路線価を設定。
路線価を基礎として、各画地の個別的要因を検討して、各画地を評価する。
従来、土地区画整理事業、固定資産税及び相続税等の土地の評価方法として伝統的に採用されてきた手法。
(長所)
各路線に価格が布設され、公表されるので、権利者にはわかりやすく公平感を与える。
簡便で、多数の画地を統一的に処理できる。
(短所)
画一的になる恐れあり。
路線価を形成している画地の間口・奥行・形状等の個別的要因を明確にしないと、各画地の評価に誤解が生じる恐れあり。
路線価式
評価法
(指数表示)
区域内の各画地を、それぞれが面している道路を中心に等地価帯に区分して路線価を設定。
路線価を基礎として、各画地の個別的要因を検討して、各画地を評価する。
(長所)
各路線に指数が布設され、公表されるので、権利者には全体の価格バランスが理解されやすく公平感を与える。
簡便で、多数の画地を統一的に処理できる。
価格表示でないので、施行者は事業採算上柔軟な対応ができる。
(短所)
画一的になる恐れあり。
価格表示でないので、権利者は自分の評価額がわからなく、対応策が立てにくい。
標準地
比較法
区域内の各画地を、等価ブロック毎に分け、各ブロック内の画地のうち具体的な代表画地(標準地)を選定し、評価する。
代表画地と個別的要因の比較を行い、各画地を評価する。
道路拡幅事業等で採用されてきた手法。
(長所)
標準地の間口・奥行・形状等の個別的要因と価格が明示されるので、標準地と各画地を比較しやすい。
(短所)
代表的な画地が必ずしも存在するとは限らない。
標準価格
比較法
近隣地域毎に標準画地を設定(この場合の標準画地は想定画地の場合もある)。
標準画地について標準価格を査定し、各画地について個別格差修正を施して各画地を評価。
不動産鑑定評価制度が確立されてから採用されるようになった価格形成要因に着目する手法。
(長所)
各画地の個別的要因を反映した評価ができる。
全体の価格バランスを公表しないので、施行者は事業採算上柔軟な対応ができる。
(短所)
権利者には全体の価格バランスがわからず不公平感を与える恐れあり。
標準価格
比較法と
路線価式
評価法の
折衷法
近隣地域毎に標準画地を設定。
標準画地について標準価格を査定。
路線毎に標準画地を設定し、路線毎の標準価格を査定。
各画地について個別格差修正を施して各画地を評価。
(長所)
各画地の個別的要因を反映した評価ができる。
路線毎の標準価格が公表されるので、権利者には全体の価格バランスが理解されやすく公平感を与える。


(2)従前建物の評価
 市街地再開発事業の場合には、従前建物価額は、都市再開発法第80条の規定では「近傍同種の建築物の取引価格等を考慮して定める相当の価額」とされています(全員同意型は適用されません)。
 実務上は、一般の建物の鑑定評価と同様に、原価法を適用し、再調達原価(推定再建築費)を求め、経過年数、利用状況、維持管理の程度等を考慮した現価率(または減価額)を査定して、建物の現在価額を評価します。
 しかし、木造の老朽化した建物など、一般には不動産としての市場価値は乏しいですが、市街地再開発事業においては補償的観点から評価することも少なくありません(不動産鑑定評価基準にいう減価要因のうち、機能的減価要因・経済的減価要因より物理的減価要因に重点を置くという考え方)。

(3)従前借地権の評価
 市街地再開発事業の場合には、従前借地権価額は、都市再開発法第80条の規定では「近傍類似の土地に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額」とされています(全員同意型は適用されません)。
 借地権の鑑定評価手法には、以下のものがあります。
評価手法 算定式
取引事例比較法
借地権・借地権を含む複合不動産の取引事例価格
×事情補正×時点修正×標準化補正×地域格差修正×個別格差修正
収益還元法
(借地権残余法)
((借地権付建物の実質賃料−借地権付建物の必要諸経費)
−建物に帰属する純収益)÷還元利回り
賃料差額還元法
(宅地の正常実質賃料相当額−実際支払賃料)÷還元利回り
割合法
更地(建付地)価格×借地権割合
控除法
更地(建付地)価格−底地価格
 また、以下の地域の違いにより、借地権の鑑定評価手法が異なります。
借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域の場合
@取引比較法、A収益還元法(借地権残余法)を標準
B賃料差額還元法、C割合法を比較考量
借地権の取引慣行の成熟の程度の低い地域の場合
A収益還元法(借地権残余法)を標準
B賃料差額還元法、D控除法を比較考量 
(次号に続く)

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